【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
「ここまでやるなんて予想外だな」
「私は…貴方を許せない」
「ふんっ、お前が本当に許せないのは俺じゃないぜ」
…は?
「どういう、こと」
私がそう聞くと
「くっ…あはははは!」
冬詩は声を上げて笑った
「皮肉だよなぁ?
お前の兄貴を直接殺した奴の弟が仲間なんてよぉ!」
お前の兄貴を直接殺した奴…?
紅雅を殺そうと意思はなくても
殺したのは私でしょ?
他に誰が…
まさか
「…っ東?」
「そ。せーかい」
「でも東なんて苗字誰もいない!」
「苗字なんてなすぐに変われるんだよ
東 は母親のだ。元の名前それは
桐島。
桐島 流聖だ」
言葉を、失った
「なぁ、桐島 翔聖。
お前年の離れた兄貴がいるだろ?」
皆が、翔に目を向けた
翔は目を見開いたけど
やがて、俯き
「…あぁ。
母親は東で兄は流聖だ」
"弟はちゃんと良い人に引き取られた"
東が言っていた弟って翔のことだったの…?
なんで…
こんなの残酷すぎるよ
「でもっ…東は紅雅を殺してない!
私達を救お…「結果的にはな。」
「お前ら、自分が何もしなかったら
アイツの兄貴に殺されてたんだぞ」
「…………………っ」
何も、言えなかった
誰もが言葉を無くし沈黙が続く
それは私も
…翔も
だけど
「だから、何…?」
「…あ?」
「確かにそうかもしれない。
でも私が好きなのは翔自身
東は関係ない」
貴方を…翔を憎む事は私には出来ない
「お前はどうなんだよ?
コイツら兄弟の余計な情のせいで
お前の兄貴は人殺しにされ自殺した
その生き残りをお前は愛せるのかよ?」
「てめぇ、そんな言い方ねーだろ!」
その時声をあげたのは千歳。
「そもそも根本的に間違ってんだよ
紅愛も紅愛の兄貴も、翔も翔の兄貴も
みんな炎薇の野望の被害者だろ!?
責められ憎まれるのはお前らだ!!」
千歳…
「俺は紅愛を憎んだことなんてない
お前が俺の兄貴がした事を許してくれるのなら
俺はお前といたい」
翔…
「二人とも、ありがとう」
そうだよね
紅雅の死も東の死も今この時のため
無駄になんてならないんだ
そして、今生きているのは私達だ
「…なーんだ。つまんねーの
そろそろ終わらせようぜ
本気出すかんな」
なに、これ…
冬詩の目つきが変わった
冷たく全ての人を見下した目
あの背筋が凍る感覚が蘇る
「教えてやるよ。
お前らの兄弟を殺し合うように仕向けたのは
炎薇の総長、中川は
俺だ」
ククッ
そう言って歪んだ笑みを零した冬詩は
「じゃーなー、またあの世で会おうぜ」
耳からとった黒い石を投げた
そう、あの時と同じように
…両親に忘れられた日と同じように
目を見開いた時にはもう辺りは光に包まれていた