【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
暫くして、暗い視界の中でもう光が無くなったことを感じた
「ん…」
ゆっくり目を開く
そこに見えたものはさっきとあまり変わらない
ただみんなが眩しそうに腕で顔を覆ってることくらい
「やっと起きたか」
そう思ったのに。
後ろから声が聞こえて振り返る
「……………っ」
その声は冬詩のものだ
だけど、なんだか
凄く
…怖い
睨んでる訳でも笑ってる訳でもない
無表情。だけど
ただ、光った間に冬詩が変わった
足がすくんで動かない
「は?今更何怯えてんだよ」
ギリギリとゆっくり近づいてくる冬詩
怖い
人を本気で怖いと思ったのはこれが初めてかもしれない
だって
私に近づく度に口元が緩んで
笑っているから
逃げろ、逃げなきゃ危ない
本能はそう言っているけど一歩も動けない
まるで何かが足を押さえているかのように
動け…動け…
頭ではわかってるのになんで…!
私が焦るその一方で
冬詩はついに銃を構えた
冷や汗が止まらない
このまま何も出来ずに死ぬんだろうか?
ふと、そんな疑問が頭をよぎった
…いや。そんなのダメ
そうは思うけどやっぱり体は動かない
私はゆっくりと目を閉じた
「紅愛ぁっ!」
バンッ!!
バキッ
「はぁ…はぁ…」
聞こえた泉の声に目を開いた私は
咄嗟に刀を振りなんとか銃弾を避けた
それでも、硬直から逃れた代わりに体力の消耗が激しい
それに…
「てめぇ…」
冬詩の表情が変わった
さっきまでニヤニヤ笑っていたのに
今は怒りに震え鬼のような形相をしている
だけど、さっきみたいな恐怖は無い
「殺す!」
でもそう言いながら私に次々と銃を打つ冬詩
「早い…っ」
切りにくいコースを狙い済まし高速で発砲
これが最高峰の銃使い…?
私はなんとか自分には当たらないものの
さっき掠った左腕に感覚が無くなっていて
体力だってもうほとんどない
その中で避けきる自信なんて無かった
「ぅ…っ……」
その時、一発の弾が右足を掠った
それもさっきよりかなり深い
激しい痛みにその場に倒れ込む
紅愛!そう皆が心配そうに名前を呼ぶけど
大丈夫だよ、そう言える力は残っていなかった
肩で息をして顔を歪めながら冬詩を睨む
「どうだ、今の気分は」
「はぁっ…はぁっ…」
最悪、でしょ
「結局一人じゃ何もできなかったな」
クックッと可笑しそうに笑う冬詩
確かに一人じゃ何もできない。
けど私は、ここの数ヶ月で貴方が悲しい人なんだって気づいた
「私は…っ
確かに何もできないけど
そんな時はいつも誰かが支えてくれてた
1人なんかじゃなかった!」
絶体絶命
だけど私には心配してくれる仲間がいて
ずっと傍にいてくれたローズがいる
「だから仲間を何とも思ってない人なんかに負けない!!」
"石を空に!"
その時、どこからかそんな声が聞こえた
「お願い…力を貸してっ…!」
私は耳からピアスを外し空に向かって投げた
すると再び閃光が走った