【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~


「紅愛さん」


聞き覚えのある声に私は目を開けた


そこは何も無い白の空間


そして


「…ローズ」


赤い龍、ローズがいた


「これが最後ですがよろしいですか?」


「…うん」


ついに終わるんだね


この長かった争いが


「掟を破り石の力を使えば


どんな代償があなたに来るかわかりません


それでも…この力を使いますか?」


両親が記憶を消された事を考えれば


凄く怖い。でも


「それでも、使いたい」


皆がそれで笑顔でいてくれるのなら


十分だ


「わかりました」


優しく微笑んだローズ。そして


「…いってらっしゃい」


「ありがとう


行ってきます」


私も精一杯の笑顔を向けた


そして、目を閉じた


「ご幸運を」


意識が消える前、聞こえた言葉に微笑みながら
















再び意識が戻ってきて目を開いた


そしてその異変にはすぐに気付いた


「これが…石の力…」


体から力が湧いてくる


「お前…っ!」


その時聞こえた声に顔を上げる


さっきの光も冬詩が石の力を使ったからなんだ


そして両親の時も


私達を庇うために石の力を使った


薄々は気づいていたけど…やっぱり


自分のせいだと思うと苦しい


「 石の力同士の戦いか」


そうだね


誰にも終わりの予測がつかない争い


それでも


「私は絶対負けない」


「こっちのセリフだね


俺が負けるはずがねーだろ!」


バン!バン!バン!


パーン!パーン!パーン!


そうして再び私達の戦いは幕を開けた


打っては切られ進んでは押し戻される


一進一退の状況が続いていた


お互いの顔に余裕なんて無い


全力がぶつかり合っている


周りは祈るように二人を見つめていた



はぁ…っ…はぁー…っ…


だめだ意識が霞んできた


力は溢れ出てくるのに体がついていかない


血が足りてないのなんてわかっていた


止血もろくにしないで激しく動き回ってるんだから


冬詩も石の力で格段に強い


速い銃弾を交わしながら攻める


ただでさえ苦しい状況の中で


そんなことが出来るだろうか


…もう、できるかできないなんて


言ってる時間も体力も無いんだけど



やるしか、ないんだ



ただ…勇気が無くて


銃弾の痛さを知ってしまった今


無意識に体が拒否反応を起こす


こんな時でも弱虫なんだなぁって


また弱気になりそうになる













「カ…ンザ…キ…」


「…………っルイ!?」


その時後ろから聞こえた小さな声に


思わず振り返った


…さっきまで意識がなかったはずなのに


そこには苦しそうに私を見ているルイがいた


「おいおい、よそ見してるなんて余裕だな」


だけど冬詩のその言葉で再び前を向かざるをえなかった


どうしてもルイの言葉が聞きたくて


通信機に声を掛けた


"ルイ…聞こえる?"


"あぁ…"


"…ごめんなさい、本当に"


変わりのない優しい声に少し安堵する


"謝る…なよ…"


"でも…っ!"


"カンザキ



あ…りが…と…な…"


"え?"


"ルイ?ねぇ聞いてる?


ルイ!!!"


最後のお別れみたいな言い方に嫌な予感がした


余裕があるとか無いとかそんなのお構いなしに


ルイの方を振り返った


「………っ」


なんで


ルイは…顔をあげていたのに


今は再び力無く倒れていた


心がぐっと詰まる思いがした


自分の顔がどんどん強ばって


行き場を失った声が胸を熱く締め付ける


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