【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
どうして、とか、なんでとか
そんなのわかりきってたことだけど
それでも気持ちの整理がつかない
痛くて苦しくて辛くて
カタン…
力が抜けて支えるものが無くなった刀は
地面に落ちていった
「はっ降参かよ?」
降参?
大切な人を失ってそれでも戦う意味ってあるの
それも、いいのかもしれない
「ガッカリだな」
無言を肯定と受け取ったのか冬詩は
カチャ…
私の頭に銃を突きつけた
もう銃を突き付けられることに恐怖も感じない
慣れちゃったのかな、なんて。
「…変わりたい」
小さく呟いた
自分の心の声を
自分の耳で聞いた
すると不思議とモヤは無くなって
心がなんだかスッと軽くなった
それは
私が新しい私を受け入れた瞬間。
強くなりたい、変わりたいと強く願い過ぎてしまったゆえに
新しい自分はそれで本当にいいのか
自信が無くて、分からなくて
心の奥に秘めた本当の気持ちをさらけ出せなかった
だけど。
強くなって変わっても
大事な人がいなかったら
守りたい人が傍にいなかったら
意味、ないじゃん
怖がって逃げて後に後悔するのなら
今
例え間違ってたとしても
何かをしなきゃいけないんじゃないって
そう思えたから
"今"変わるんだ
「そんなわけないじゃん」
ゆっくりしゃがんで刀を手に取る
「これで終わらせよう」
沢山迷って沢山遠回りをしたから
そして、多くの人を傷付けすぎた
「…そうだな」
冬詩も私の変化に驚きつつも冷静だった
お互いが離れて距離を取る
セイラと戦ったあの時みたいに
「じゃあね」「じゃあな」
それが、合図
お願い。最後に少しだけ力を貸してね
心の中、小さな声で呟いた
バーーン!
カンッ!!
最後のその音はいつまでもホールに響いていた