【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~



「なぁ月希」


夜斗はスタスタ歩いていた足を止め


いつものように後ろをチョコチョコ歩く月希を振り返った


「え、えぇ?なに?」


彼女はいきなり話しかけられた事に驚きながら立ち止まった


夜斗から話しかけてくれた事、名前を呼んでくれたことが本当に嬉しかった


「この街の呪い知ってるか?」


「…それって"夜の呪い"?」


「そう」


夜の呪い、それはこの街の有名な呪い


昔、この街にいた若いカップルの話だった


愛し合ってた2人だけどある日男の子の浮気が発覚し


悲しみにくれた女の子が男の子を殺害し自分も後を追うように自殺した話


そして二人が亡くなった場所に憎む人を連れていくと呪いがかかる、らしい


だけど…その代償は大きいんだとか


「それが、どうしたの?


……まさか!?」


「ふっ、まさか」


ードキッ


「そ、そっか。だよね」


本当に久しぶりに見た夜斗の笑顔


高鳴る鼓動に呪いの事なんて頭から抜けていた


それから数日。いつもと変わらない日が過ぎた


ーだけど


17年もの絆が全てが崩れるのは一瞬だった


とある日


それは薄暗く黒い雲が立ち込める日だった


「ねえ、夜斗見なかった?」


帰る時間、いつもはいるはずの夜斗の姿が見えない


月希はクラスメートに訪ねた


「夜斗君?たしかさっき紅羽と來斗を追いかけて出て行ったよ?」


…なんだろう


「そ、そっか!ありがとう」


凄く嫌な予感がする


月希は慌てて教室を飛び出した


だけど、どこを探しても3人はいない


いつもの道も、よく寄り道したお店も


どうして…?


「…あ」


ふと、ある場所がひらめいた


「まさか…」


それは勘違いであって欲しい場所だった。


冗談だと思ってたのに。でも


私に笑顔を向ける事なんてあるわけないじゃない


どうして気づかなかったんだろう…


…いや、まだ決まった訳じゃない


きっと何か用があったんだよ


そう思わないと不安に押しつぶされそうで


嫌な鼓動を押し込めて再び走り出した














「紅羽!來斗!」


來斗と帰っていると、後ろから呼ばれて振り返る


「夜斗…」


相手は夜斗。最近あまり話してないから驚いた、だけど


「月希は?」


私が言いかけた事を來斗が首を傾げて言う。


同じ事考えてた、なんて思って内心少し嬉しいかったり


「あぁ、月希は今日用事あるらしい」


「そうなんだ」


「んでさ、今日月希と一緒に行くとこあったんだけど…暇なら行かね?」


月希と一緒に…?


普段人と関わろうとしない夜斗が女の子と二人で行くなんて


…月希、やるじゃんっ!!


「月希と約束してたなら月希と行った方がいいんじゃない?」


頑張れ!月希!


でも夜斗は


「それ、今日じゃないとダメなんだ」


「…そうなの?」


えぇータイミング悪い


「來斗どーする?」


來斗を見上げると、うーんと悩んでるみたいだったけど


「夜斗がそう言うなら行くか」


その言葉で私と來斗は夜斗の後ろについて歩き出した
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