【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
「はぁ…はぁ…」
私は舗装されてなく足元が悪い山道を走っていた
まさか、夜斗はあの呪いを実行しようとなんてしてないよね…?
きっとその場所には居ない、何かの間違えだって信じてるのに
早く行けと体は言う。
まるで、嫌な予感が当たっているかのように
それでも信じて足を進めた。間違いならそれで良いんだから
…でも
「足……跡……?」
降った雨で少しぬかるんだ道にそれはあった
まさか…ね。
確かに足跡はあるけどどれも確認できるようなものじゃないし
うん、そうだよ、そう
そう思ってぬかるんだ道を抜けた。
するとそこは小さく開けていて何もなさそう
次に繋がる道は無さそうだしここで終わり
やっぱり気のせいだ。安堵のため息をついた。その時
「………て!!!」
人の、声…?
それは道になっていない森の方から聞こえる
少し近づいて耳を澄ませた
「いやぁー!!やめて!!!!!」
…紅羽っ!!
それは紅羽の声だった
体が反射的に動いて走り出す
やっぱり勘違いじゃなかったのかもしれない
ただひたすら私は走った
「紅羽っ!どこなの!?紅羽ー!!!」
私のお腹位ある草を掻き分けて薄暗い道を進んでいく
お願い紅羽、無事でいて…!
強く、強く願った
…その時、一筋の光がさした
「出口…!」
なんでかはわからないけど疑いは無くて光に向かって走った
「………………っ」
眩しい光に一瞬顔を逸らした
だけどもう一度目を向けると
「…………………っっ!!」
声が、出なかった
私が目を向けたその時
崖の淵に立っていた男の子が紅羽の背中を押した
紅羽はバランスを崩して
「っ…月希!」
一瞬、私と目が合って。
私の名前を叫びながら崖の下へ姿を消した
訳が、わからなかった
頭がぐちゃぐちゃで整理できない
「くれ、は………」
私が呟くと、紅羽を突き落とした張本人。
…見覚えのあるその男の子はゆっくり振り返った
「……夜斗っ」
振り返ったその瞳に光は感じられなくて
全てに諦めたような生気を宿していない顔だった
そして、狂気にも近いオーラに思わず固唾を呑んだ
「ははっ…意外に早かったな」
「嫌な予感がして…走ってきたの」