【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~


「ふぅん、まあいいよ。


お前が来たところで俺達の未来は変わらないからな」


吐き捨てるように言う夜斗に眉を寄せる


夜斗は…本当は凄く優しいんだ


でも、そんな夜斗を変えたのは大人たち。


偏見、好奇の目、罵声…それが彼を変えてしまった


夜斗の家系…家柄は元々街の人間で、身分が低かったらしく差別に苦しんでた


そんな時、たまたま街にいた私の村の"青"の人が夜斗の先祖の心の清さを見抜き村に来るように誘った


そして、村に来る決意をした夜斗の先祖は早々に村に来たんだけど…


そこでも夜斗の先祖は苦しむ事になった


私の村は皆髪や目の色が違うからその色で呼ばれる事が多かったの


だけど夜斗の先祖の髪の色は"黒"


それは、私の村では"異端"だった


なんせ、"黒"の人は生まれたこともなかったし、それもあってか"不吉の色"としてあまりよく思われてなかったから


だけど"青"の懸命な働きかけで少しずつ皆の意思は変わっていき今では偏見はほとんど無い


ーー…それでも"黒"への根本的な理解は得られなかった


今回の件で"青"は優しき心を持つ恩人として評判があがり"黒"は優しき青に助けられた者とされた


つまり、"青"は"黒"の恩人なのだから奉仕しろ、と


それはどんなに"青"が拒んでも変わらなかった


そして、代が変わると立場も逆転した


"黒"を助けた"青"の跡取りは、それは欲にまみれた傲慢は人だった


跡取りは"黒"に理不尽な取り引きを前代の恩を使い無理矢理結ばせた


…それでも"黒"は挫けなかった


街にいた頃に比べれば、と辛抱強く耐えたんだ


そしてまた次の代になった


その時の"青"は未だ親の影響が残っていたが"赤"との出会いにより状況は一変


"赤"は真の優しさを一族の教訓としていた


そして"青"は"赤"の心に触れ優しさを取り戻した


それから私達の代まで若干の"黒"への差別もあるがだいぶ落ち着いた


"黒"つまり夜斗は"青"、來馬が恩人であると共に自分達を迫害した敵でもある

それに対して"赤"、紅羽は真の恩人


それが、今夜斗を動かしている一部なのかもしれない


だけど多分…ほとんどは紅羽が好きだから。


きっと紅羽と來馬が付き合ったのが許せなかった


夜斗と來馬は親友。


來馬は凄く優しいから夜斗も信頼してる、でもやっぱり上下関係みたいのがあるように感じてたのかな


…どうしてこんなに上手くいかないんだろう


「私…夜斗は凄く優しい人だと思うよ」


"黒"だから何だというの?


助けられたから苦しめられて恩を押し付けられてもいいの?


…そんなの、おかしいじゃん


人は助け合って当たり前じゃない


夜斗は繊細な所があるから傷つきやすいし感情を出すのが苦手だから周りから怖いって誤解されやすい


でもね、本当は誰よりも友達思いなんだよ


私や來馬、紅羽が体調を崩せば一番に心配してお見舞いに来てくれたし


私がクラスの男子にイジメられたときは助けてくれた


そんな不器用な夜斗が私は好きだった


…たとえ、嫌われてたとしても


「お前、相変わらず頭おかしいな」


だってほら…夜斗は本気で迷惑そうに睨み付けてくる


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