【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
でも、それでも…


「夜斗が私の事嫌いなのは知ってるよ


だけど私は…夜斗の事が好きだよ







ごめんね」


好きで、ごめんなさい


傷ついてるあなたに何もできなくてごめんなさい


この気持ちが届かなくてもいいからまた4人で一緒にいたいなんて運命は許してくれないみたい


「お前…」


そして、その時初めて夜斗が私に嫌悪の目以外の表情をした


それはきっと


「……っ……ぅ…」


私が泣いていたから、なのかな


気づけば大粒の涙が頬を流れていた


初めて私に向けられた表情に胸が苦しい


「夜斗は…っ


もう少しワガママになってもいいんだよ


自分の気持ち、殺さなくてもいいんだよ


もう過去なんて周りの目なんて気にしないで


堂々と生きて良いんだよ


紅羽も來馬も…私も。支えるから。


だってあなたは…




あなたなんだから」


お願いします


夜斗を楽にさせてあげてください


これ以上苦しめないでください


ポロポロと涙が溢れる


夜斗がどんな表情をしているのかわからない


でも多分、何こいつ?うざいって思ってるんだろうな


今更だけど、もう慣れたことだと思ってたのに


…やっぱり辛いかもしれない


悲鳴を上げる胸を抑えるようにぎゅっと手で服を掴んだ


その時


「月希、来い」


…あぁ、今名前を呼ぶなんて反則だよ


その意味が何なのかわかってるよ。


終わらせるんだね








…私をその崖から落とす事で



私は静かに歩き出した


夜斗の元へと


夜斗が私の事を名前で呼んでくれて、


来てって言ってくれる日が来るなんて


意味が違っても嬉しい


…嬉しいけど悲しいよ


私は夜斗の目の前まで来ると


一度夜斗の顔を見上げて


そして、目を瞑った


久しぶりに正面から見れたかも


やっぱり夜斗はカッコイイ


クラスの女子が言ってたな


夜斗君は学校一カッコイイって。


きっともっと器用に生きれてたなら女の子に沢山囲まれてたんだろうね


でも、きっと人の気持ちを弄ぶ事はしない


だって紅羽をずっと一途に思ってたんだもん


そして、夜斗が近づく気配がして更に固く目を瞑った




…ばいばい、夜斗。不器用なあなたが大好きでした


ふっと力を抜いて衝撃に備えた












なのに


次の瞬間訪れたのは


痛みではなく


全身に広がる温もりだった
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