【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
何も言わない私に翔はため息をつく
何気ない事だけどどうしてか胸が痛くなって涙が浮かぶ
だけど
「…口、噛むな。血が出る」
口にそっと手を当てられ噛むのを止めた
それはいつか、海でナンパに襲われて助けてくれた時も同じような言葉だった
「お前の考えてる事はなんとなくわかってる
俺が聞きたいのはお前の本心だ」
本、心…?
私の、本当の気持ち…?
罪や傷が有っても無くてもの私の変わらない気持ち
それは…
"蒼桜と、輝と…皆と一緒にいたい"
心の中で結論が出たその瞬間、なんだか胸にストンと落ちてきて
ふと視線をあげると
「…………………っ…」
翔の迷いの無い真っ直ぐな瞳とぶつかってドキッと鼓動が跳ねた
そしてそのまま私の頬に手を重ね、翔はこう言った
「お前が抱えてるモノが何であろうと俺は負けない
俺には仲間がいる
どんな闇でも乗り越えられる仲間が
…お前は違うのか?
俺達はお前の仲間じゃないのか?
この世界には色々なモノを抱えてる奴が大勢いる。けどな、それでも仲間がいるから少しずつ進めんだ
俺達じゃお前の抱えてるモノを乗り越えられないのか?
俺達はお前が必要だ。それは俺達だけなのか?」
さっきとは違って自信の無さそうな切ない瞳が私を切なげに見ている
何か、何か言いたいのに唇が震えて言葉が出なくてただ段々と視界がユラユラぼやけていく
胸が一杯だった
喉が熱くなって胸が締め付けられるように痛い
そして
「紅愛」
ふっと目を細める姿はまるで愛しいものを見てるようで
その瞳を見た瞬間
押し込めていた本当の
私の感情が悲鳴をあげた
「…っ……ふ…ぅ…………ぁ…」
涙が止まらない
嗚咽が出てきて肩が跳ねるのがわかるけど
今の私には声を抑えることで精一杯だった
この苦しさから逃れようと胸元を握るけど効果はなくてただ、苦しい
涙がポタポタと頬を滑って落ちてく
翔はそれを親指で拭うと
ぎゅっ、と私を抱きしめた
大好きな匂いが、温もりが全身をかけ巡って
待ちわびていた幸せに更に涙が溢れた
「一緒にいたいなら
お前の声が届くまで呼べ
そしたら必ず…お前を探し出してやる」
うん…っ…
ちゃんと、返事したいのに涙が止まんなくて声にならない。
そのかわり、何度も何度も頷いた