【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
「それから…俺の兄貴の事は気にするな
これは俺からの願いだ。何も考えなくていい
蒼桜と輝の事についてもだ
お前が俺達と一緒にいたいと望むなら輝の総長としてお前を許す
だからお前も自分を許してやれ
もう、苦しまなくていい」
ぎゅーと腕に込める力が強くなって頭をポンポンと撫でられる
あぁ、もう。だから嫌だったのに
…みんな優しすぎるよ
言いたい事は沢山ある。
謝罪も、私の全ての事も、石の事も
だけど今は言葉にならない
それでも、今、どうしても伝えたい事。
それは
「あり、がとう…」
たくさんの感謝。
それと…
これはちゃんと目を合わせて言いたくて翔の肩を少し押して離れた
不思議そうな顔をする翔だけど翔は私を真っ直ぐ見据える
…言わなきゃ
震える指先を握り締め
私も視線を上げてしっかり視線を合わせてた
だってそれは…
「私……皆と
一緒にいたい」
私の、本音。
本当の気持ちだから。
そして精一杯の笑顔を向けた
翔は一瞬目を見開いたけどすぐに目を細めてフッと口元を緩めて笑った
その笑顔は私が見たどの笑顔より優しくて甘いものだった
正直、見惚れてたと思う
顔に熱が集まってやばい、熱いっ
それに私泣いた後だし、絶対顔変。
もう、ずるい
私は赤くなった顔と目を誤魔化すように俯く
だけどそんなの翔には通用しなくて
肩を抱かれ、引き寄せられたと思えば
「見惚れてんな、ばぁか
…ほら、帰るぞ」
また極上の笑みを浮かべて言う
確信犯め…っ
内心は睨みながらも嬉しくて
「うんっ…!」
私は大きく頷いた
そして、振り向けば勿論皆がいて
きっとこのやり取りも優しく見守ってくれていたんだね
「帰ってきなよ、2人とも」
「待ちくたびれたぜーほら早く帰ろうぜ俺達の場所に」
私と翔は顔を見合わせてお互いに微笑むと
「行くか」
「うん、」
大切な皆の待つ所へと歩き出した
私と翔が寄り添って歩き、皆は優しい目でそれを待つ
それは…
蒼桜と輝、2つのNo.1が重なり交わりあった瞬間だった。
夜に舞う蒼い桜は
眩い輝に照らされ
更に美しく輝く
そして…
「紅愛」
「ん?」
皆の後ろを2人で歩いているとふと翔に呼び止められて立ち止まる
だって翔が何とも言えない顔をしていたから
「どうしたの?」
私が聞くと翔は、いや…と話をはぐらかす
え、なに…?
困惑する私
翔が率直に話を言わないのは凄く珍しい。
なんだろう??
頭の中ははてなマークで一杯だ
首を傾げていると
翔は一瞬諦めた様に笑ったと思えば
「紅愛」
「うん?…………っ…」
あっという間に軽く引き寄せられた
翔の手が私の肩に触れていて全身が熱くなる
それに熱い眼差しを向けられてクラクラしそうだ
「…?」
でも、なんで?
顔を赤くしてあたふたするばかりの私に
翔は、ふっと笑うと
「紅愛、好きだ」
甘く囁いて、微笑んだ
「………っ」
それは、私の欲しかった言葉。
そして、一度は諦めた気持ち
まだこんな私のを好きで居てくれたんだ
驚きと嬉しさでまた涙がジワジワ浮かんでくる
「…返事は?」
そんな時、翔の声が聞こえてハッとした
顔を見上げるとどことなく不安げで、
笑いが込み上げてくる
そんな所も可愛いなって思っちゃう私はきっと重症だ。
そして、そんな顔をさせるのはこれから私だけになりますように
「私も。私も好きだよ、翔聖っ」
私は思いっきり笑った
「……………っ!」
翔は一瞬驚いたように固まってたけど
見て分かるくらい段々頬が緩んで、安心したように笑った
それにぎゅーっと強く抱きしめられた
あぁ、ほんとにもう…っ
幸せ過ぎるよ
「翔、大好き…。」
つい零れた言葉に翔は私から体を離すと
至近距離で目があって
照れてくれたかな?って思ったけど
…予想外
「俺の方が好きだ、ばぁか」
不敵に笑みを浮かべて、不意に翔が近づいて
ーーー唇が重なった
尽きる事の無い大きな絆や愛は
闇夜を切り裂く大きな輝となり
蒼い桜は深紅に姿を変えた