【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~

これは翔聖のポーカーフェイスを壊すどころか幹部達のリアクション大会だって。


「楓ーっ、口あいてるよー」


「んぐっ…!」


いつまでたってもポカーン状態の楓の口を元の位置にはめてやれば


パチパチ瞬きをして現実に戻りきれてない模様。


全くどこまでぶっ飛んでたんだか


「ほらー翔聖もういないよー」


ゆさゆさ体を揺らすと


「はっ翔聖は!?」


戻った!


「翔聖はねー…」


アレ…?


じんわり背中に冷たい汗が滲む



………いない



画面には翔聖なんてどこにも映ってない


さっきまでいたのに…なんで…?


「楓、いないよ…」


「えっほんとだ…」


顔を見合わせて青ざめる


そんな事って…


コンコン


その時


ノックされた後ろのドア


私達は固まることしか出来ない





ガチャ…




「「「…………………」」」



ガクガク震えながらゆっくり、後ろを振り向くと



「「「ぎゃぁぁぁあー!!!!」」」





ドアを開け、私達を見下ろしていたのは







死神だった。





「てめぇら…覚悟しろ」



ドスの聞いた地を這うような声は、


輝倉庫にとどまらず、蒼桜倉庫にまで届いたとさ。




────*




その夜


「翔聖ーごめんってー…」


いつまでも不機嫌だった翔聖に謝るべく、


延長戦になることを睨み


いつもより寝る支度を早めに終え翔聖の部屋を訪れていた


ちなみに、あの後全員が平謝りし事態は収束しかけた。


結局翔聖の新しい表情は見えなかったけど


翔聖をイタズラで怒らせるとこの世が終わる事を全員が学んだ


けれど翔聖は意外に子供だったらしい


その日の夕飯は皆それぞれの嫌いな食べ物を使った料理だった。


そんなこんなで私も頑張って嫌いなパセリを食べた訳なんだけど


なんでか翔聖は私だけにツンとしていて


…どうやら私だけ許してもらえてない模様


透真に相談したら、


『寝る前に翔聖の部屋に立ち寄って謝ってみたら?』


という助言を頂き、今に至る



ベッドに腰掛け本を読む翔聖。


私も横に座り込んで話しかけるけど…完全無視


早くも心が折れそうだ。


「翔聖ーごめんねー?」


「………………………」


無視ですか。


「翔聖様、大変申し訳ございませんでした」


「…………………」


無視ですか。


「翔!ごめんっ!」


「…………」


無視ですか。


無視するんですか。


…そーですかっ。




「…翔、聖…うぅ…っ…」


私泣くからね。


嘘泣きだけど!



「……………」


え、これも無視…!?


確かに嘘泣きだけどさー…


でも仮にも泣いてる彼女を無視しなくても良くない…?


さすがに傷つく


…ポタッ


その時、


私の膝の上に何か落ちた


…ポタッポタッ


なに、これ


「……ぅ……っ…」


私本当に泣いてるの?


でも、認めたら隠してた弱い自分が出てきて


余計涙が止まらない


翔聖が怒って無視したからって泣くなんてバカみたい


ほんと私ってめんどくさい


そんな私を見られたくなくて、顔を覆った
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