狂々にして仄暗く
三、これは私のものだ
彼はアマチュアの小説家であった。
ネットのみで作品を公開する彼の下に、一通のメールが届いた。
『あなたの作品は、盗作です』
事細かに自分の小説との類似点が書かれた内容。実際に彼も、そのメールの主の作品を目にし、確かに盗作だと思った。
だが、盗作をしていないのは彼こそが重々承知。作家として、オリジナルの物しか公開していない。
当てつけだ、彼は思う。
他人の物を盗作しておきながら、自分の物だとのたまう図々しい奴だと彼は非難する。
だが、相手も引き下がらない。尚も、作品は盗作だと豪語するものだから、彼は証拠を引き出した。
ネット公開の利点であった。完結した日付が表紙に残ることを彼は知っていた。
盗作と言った奴の作品より、一年も前に書かれた物であると提示した結果、メールは来なくなった。
嫌な思いをしたと彼が日々を過ごし、そんなことさえも忘れかけたあくる日、とある作品を見つけ、彼はすぐさまメールを打った。
『あなたの作品は、盗作です』