太陽に願いましょう
始まりの歌
「陛下、例の方がお付きになられました。」
ここは広い砂漠のほぼ中心にあるオアシスの王国。
東西南北の貿易拠点として栄えるこの国を収めるのはまだ20代半ばの若き王、リアン。
「…通せ。」
低い声で囁いたリアンに跪いていた部下は立ち上がり扉へ向かう。
ドアを開け、外の者に声をかける。
次の瞬間、ドアが大きく開き、ジャラジャラと不愉快な音がリアンのいる部屋に響いた。
その音に顔色ひとつ変えずにリアンは入ってきた兵士に囲まれた人物を見る。
リアンから10歩前で止められた、鎖に繋がれたその人物。
「…なんて様だ、姫君。」
「……」
静かに顔を上げたその人物は、リアンよりも若い少女だった。
群青色の瞳に薄い水色の髪、真っ白な肌。
そして何よりも目を引く頭についた角とスカートの裾から覗く尾。
「竜人族、か…」
古来より人間と共存していたという種族は多くいる。
だが、それはもう御伽噺となっている。
対立し、殆どが滅びた。
この少女の種族、竜人族も然り。
だが人間よりも強靭な肉体、賢さを持ち合わせた竜人族はまだ何処其処で生き残っている。
そこでリアンは竜人族と掛け合い、姫を娶った。
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