太陽に願いましょう
竜人族を保護する約束と共に。
「何故…」
竜人族の姫、ラハは小さく呟いた。
「それは何故娶ったのか、という意味か?」
リアンの質問にラハは静かに頷く。
首に巻かれた鎖がまたジャラジャラと音をたてる。
「ラハ姫、貴女は雨を降らせることができるそうだな。」
リアンの濃い紫の瞳がラハを見つめる。
ラハは下唇を少し噛みながら、また頷く。
「ええ…、歌で…」
様々な不思議な力を持つ竜人族。
この姫のその不思議な力は絶大だった。
美しい歌声で天候さえも操る。
それ故にこの姫は竜人族が暮らす集落の奥の洞窟に匿われていた。
「その力がほしくてな。」
「…貴方は、強国の王でしょう。これ以上何を望みますか。」
その問いにリアンは立ち上がり、背にしていた窓を見る。
「この国は砂漠のオアシスだ。枯れた土地にある唯一の水源。だが、ここ十数年雨が降らなくなってきている。」
突然の語りにラハは眉をひそめる。
「だから、水がいるのだよ。…そう、雨がな。」
ラハはハッとリアンを見た。
「この国の為なら何でもしてきた。近隣諸国から守る為に。だがな、」
リアンはラハを振り返る。
「この俺でも、雨だけは降らせられないんだ。」