出会って1秒出逢いは1年


「あれ?……千種。早かったね」


振り向くとちとせが買い物袋を提げてたっていた。


「……どこいってたの?」

若干、機嫌の悪い声が出る。


「千種来るっていうから急いで買い物してきたの。なんか食べるでしょ?」

当たり前でしょと言わんばかりにこてんと首を傾げたちとせになにも言えずに口に手の甲を当て、頷く。


「とりあえず、中に入ろ」


「ああ…」


初めて入るちとせの部屋を見渡しながら、台所に入っていくちとせを追いかける。


「千種は座ってて良いよ。軽いもの適当に作るから」


手際よく作業に取りかかっているちとせを見ていると、なんとも言えない感情が沸き起こってるのが分かる。

結局、台所に隣接したカウンターの前に座ってずっとちとせを見てた。


「はい 出来たよ」

差し出されたのは甘い香りのするバタートーストとコーンスープ、野菜炒めのベーコン添えが出てきた


「割と本格的」

「見た目はね。でも、甘さと塩味共に控えめだから体にはいいよ」

「ふーん。いただきます」

確かに、味付けは控えめだけど素材の味がしてちとせらしくて…美味しかった。




「ちとせ、美味しかったよ。ごちそうさま」

「ふふ、よかった」


綺麗だ、ちとせの微笑みをそう思ったのは大きな窓の外にいる月が美しかったからか……それとも。



「ねえ」


ちとせ────…


この声は聞こえたのだろうか。





< 22 / 33 >

この作品をシェア

pagetop