出会って1秒出逢いは1年


「千種…?」

「……ずるい」

「えっ…と?」


表情が俯いた拍子にかかった髪の毛ではっきりしない。

椅子を降りて千種の前に膝立ちをすると顔を覗き込む。


赤く染まった耳が見えた……と思ったと同時に

「わわっ!!」

頭を抱え込まれた。

「……顔見んな」

「なんで?」

「ちょっと黙れ」


それっきり喋ろうとしない千種に抱かれたままぼーっとそのままでいる。



「……ちとせさ無防備すぎる」


唐突にぽつりと降ってきた言葉を理解できずに首を傾げる。


「無防備?……私が?」

なんのことだかわからずに顔を上げようと動くが、だから見んなって、ときつく抱き締められる。


どーしよ…
必死で頭を巡らせていたら…



ピーンポーン


「誰だろ?」

「ほっとけ」

「でも……千種?」

「……分かった、俺が行く」


離れた腕から出てソファに腰掛けようと方向転換をした。


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