出会って1秒出逢いは1年
“千種side”
「ちとせ」
「なにー?」
「……なんでもない」
ふと不安になった。伊月がどうのって訳じゃなくて…女々しいな、俺。
手にした温もりは手放せなくなるから、それなら掴まぬ方がいいだろ。
そう思っていた少し前の自分に心からの蔑みと侮蔑を送ってやりたい。
手にすることができたから手放すことを恐れるのだ、つまり手にすることすら出来なかった人は手放すという悲しみを知らぬまま年を重ねていくのだ。
これといったこともしないまま、出勤時間が近づいていた。
こんなことなら遅番変更してもらえばよかった。
夜に一人でいるのより、昼間忙しさに寂しさを忙殺された方が気が楽だってだけの話だけど、、、
誰もいない診察室で鳴るはずのない携帯を眺める俺はかなり女々しい。
もう深夜1時を回っていてちとせは寝てしまっただろうと思う
そう思い深いため息をはいたとき
ノックもなしに扉が開いた。もちろん看護師たちではない。
「なんか死んだ顔してるじゃん」
「なんでお前?」
たしか今日は夕方で切り上げだったはず、