恋は盲目〜好きって言ってよ
「奈々ちゃん、どうしたの⁈俺の話、面
白くないかな?」
「そんなことないですよ。飯島さんって
かっこ良くて面白いなんてサイコーじゃ
ないですか⁈きっと、モテモテなんでし
ょうね」
「拓海がいると全然…最近、合コンに不
参加だった奴が、珍しく自分から乗り気
で、びっくりしてたんだけどね」
横目で拓海さんを見る飯島さん。
「そうなんですか⁈」
拓海さんを見つめると
「やっぱり、奈々ちゃんも拓海狙い⁈」
覗き込むように私の顔を伺う飯島さん。
「えっ、皆、素敵な人たちばかりで私が
ここにいるの申し訳ないです」
「奈々ちゃん。かわいいしミスに選ばれ
るの納得なんだけど」
お世辞でも嬉しい。
「俺、奈々ちゃんタイプなんだよね。俺
なんてどう⁈」
ピクッと目尻が上がる拓海さんと早希。
「………」
飯島さんはクスクスと笑い拓海さんに聞
こえないように小声でつぶやく。
「相談のるよ」
にこやかに笑う飯島さん。
平静を装っていたつもりなのに、きっと
拓海さんの事を思う気持ちが飯島さんに
はわかってしまったのだ。
知られてしまったことに動揺して2人の
会話が聞こえない。気づけば早希と飯島
さんはいい感じで仲良く話している。
一次会もお開きとなり2人にカラオケに
誘われたがもう限界だった。
拓海さんに無視されると辛い。
急いで化粧室に向かい溢れる涙を拭いて
化粧室から出ようと扉を開ける。
「遅い…」
壁に背を突きつけられドンと彼の手が壁
にあたる。
…逃げ場を塞ぐ彼にドキッとしてしまう
なんで…今更、声をかけるの。
なんで、ここにいるの。
飯島さん達と一緒に行かなかったの⁈
「奈々ちゃん、俺が怒っているのわかっ
てる⁈」
なんで怒っているの⁈
一言も会話をしていないのに…
「………」
黙っていると更に顔が近づく。
「あの日なんで黙って帰ったのかな?」
真剣な眼差し…彼の瞳にうろたえる私が
写っている。
「………」
あなたを好きになってしまったんだもの
……
あなたの横にはきっと素敵な人がいる。
あなたに拒絶されたら立ち直れない。
「……ふーん。俺、遊ばれたのかな?」
意地の悪い顔で睨む彼。