恋は盲目〜好きって言ってよ
少しは、期待してもいいのかな⁈
あなたの横を歩いていいの⁈
ずっと、そばにいたい…欲深くなってし
まう。
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「ねぇ、奈々ちゃん…花火大会一緒に行
かない⁈」
突然、話し始めた彼から誘われた。
電灯に照らされた掲示板には花火大会の
ポスターが貼ってあった。
これを見て、思いついたのかな⁈
「……」
行きたい…
「まだ、日があるし考えておいて…」
「……うん」
優しく言葉をかけられると素直に頷いて
しまう。
しばらく歩くと見えてくるマンション
「ありがとう…そこだからここでいいよ
」
なかなか、手を離そうとしない彼。
マンションの前まで来ると繋いだ反対側
の手を差し出す彼。
「…なに?」
「携帯、出して」
「………」
意味がわからないまま巾着から携帯を取
り出すと、私の手から取り上げ番号を打
ち込む彼。
「俺の番号」
ただ一言そう言って手元に返ってきた。
「おやすみ、奈々ちゃん…」
「おやすみなさい…」
「奈々ちゃん…」
「なに?」
「奈々ちゃん、俺の名前覚えてる?」
覚えてるに決まってる。
拓海さん
私が好きになった人だもの。
「覚えてるわよ」
「言ってみてよ」
「…た、拓海さん」
緊張で言葉がつまる。
「さんはいらないんだけど…まぁ、いっ
か」
手を引き寄せられ唇に温かい感触。
彼の唇が触れている…下唇を舐められ背
筋がざわつく。
「ごちそうさま…連絡待ってるから…お
やすみ」
「送ってくれてありがとう。おやすみな
さい」
満足そうに微笑むと彼は手を振りながら
もと来た道を帰って行った。
唇には、彼の感触が残っている。
ベッドに横になってもなかなか寝つけず
に人差し指で唇をなぞる。
抜けきらない彼の唇の感触。
視線の先にはあの日彼から借りた服。
彼からの誘い…デートってことだよね。
期待してもいいのかな⁈
期待しすぎて落ち込みたくない。
だから、浮かれる想いにブレーキをかけ
る……