恋は盲目〜好きって言ってよ
笑顔で肩を押され、後ろを振り向くと不
機嫌な顔で後からついてくる彼がいた。
「オー、きたきた。」
そこは、ベンチをテーブルの代わりにし
て酒盛りをしている男達と早希がいた…
「そこに、いて」
ガードレールを指差し小声で言う彼は、
輪の中に入って楽しそうだ。
大輪の花火が空に咲き、打ち上がる度に
ドーンと響く音に歓声が湧き1人置き去
りにされた気分だ。
下駄で長い距離を歩いたせいか足の指に
痛みがはしり、少し、離れたガードレー
ルに寄りかかる。
こんなことなら来なければよかった。
指の痛みと心の痛みが重なり惨めになり
落ち込んでいると飯島さんが横に腰掛け
る。
「誤解してたらごめんね。今日は、飲み
会だったんだ。誘っても断るし、朝から
張りきって仕事してるからもしかしてっ
て思ってたら早希ちゃんから花火大会の
話聞いてなるほどって思ってたんだ。偶
然会えるなんて思ってなくて、思わず声
かけちゃって2人の邪魔してごめんね」
「…そんなことないです」
突然、背後から冷たい物体と早希の笑顔
「…冷…」
「奈々、ごめんね。びっくりした⁈」
差し出される缶ビールを手にとる。
「もう、びっくりしたわよ」
「ごめんって…こんなに広いのに奈々に
会えて嬉しかったんだもん」
「そうだね、でも、なんで飯島さんとい
るの⁈聞いてないんだけど。」
「だって、急に決まっし……」
横に飯島さんがいるから話にくいのか言
葉が止まる。
そこに拓海さんが飯島さんに話かけた。
「お前、あっち行けよ。邪魔」
飯島さんをしっしっと追いやり、隣に腰
掛ける彼。
「ひどいな、早希ちゃん俺たち邪魔みた
いだし戻ろっか⁈」
「そうみたい」
2人は、笑みを浮かべ戻っていった。
「…ビール飲めば」
拓海さんに促され栓を開け口をつける。
ゴクッ、ゴクッ…ふー。
美味しい。
「俺にも、ちょうだい」
私の手から缶ビールをとると一口、二口
と流し込み私に差し出す。
間接キッス⁈
首を横に振り彼の唇を見つめる。
酔いが回ってきたのかすぐそばに彼がい
るからなのか鼓動が早く波打つ。
花火も終盤にさしかかりいくつもの花が
咲いていた。