恋は盲目〜好きって言ってよ

残りを一気に呑むと彼は私の鼻先に人差

し指を立て、しっ〜と動く唇。


頷く私の手をとり立ち上がる彼。


手を繋いで彼の顔を見る。


唇が動く。


『帰ろう…』


飯島さん達に別れも告げず歩き出す。


いいのかな⁈


花火大会が終了したのか出口にさしかか

る頃、人混みが動き出した。


「その足じゃ、人混み辛かっただろう。

早めに出て正解だったな」


くしゃくしゃの笑顔の彼。


こんな表情もするんだ。


気づいてくれたんだ。


繋いだ手に力を入れる。


なにっと顔を除く彼。


「どうして、わかったの?」


「ここに着いてからずっと右足ひきずっ

てたろ」


そんな前から知ってたの⁈


だから、そこにいてって、ガードレール

を指差したの⁈


「迷惑かけて、ごめんなさい」


「なんで?逆に嬉しいけどね。俺の為に

着飾ってくれたんだろ」


私の下心…なんて言えない。


嬉しくてゆるむ頬。


好き…やっぱりあなたが好き。


「その足じゃ、歩いて行くの辛いよな。

晩飯、どこかで一緒に食べようと思って

たけど、どうする?今日は、ずっと一緒

にいたかっんだけどな」


彼の熱い眼差しに心が踊る。


「わたしも、ずっと一緒にいたい」


「本当?」


「うん、拓海さんといたい」


「…もう少し、痛いの我慢できる?」


こくんと頷く。


私の歩幅にあわせて歩いてくれる彼。

無言だが、時たま私を気遣い歩みを止め

ると大丈夫っと顔を向けられると心配す

る彼の首に腕をからめその動く唇に触れ

たいと思ってしまう。


足の痛みを忘れ、欲情している自分が恥

ずかしい。


「その顔、反則…人が我慢してるのにあ

おってるの」


私は、どんな表情をして彼をあおってる

のだろうか?


わからない…


だけど、拓海さんの色気をまとった表情

が…熱く見つめる瞳が私を誘う。


自然と彼の唇に触れる。


まばらに人が通りすぎていく中、そんな

事も気にせずキスに夢中になっていた。


早く2人きりになりたくて彼のマンショ

ンへ向かう道のりが長く感じた。

ーー
ーーーー
ーーーーーー

部屋の前


彼は鍵を開け私を玄関の中へ引き込む。


ドアが閉まる音と同時に体をドアに押し

つけられ彼の唇は私を捕らえていく。


激しく求める彼とのキスに乱れる息…


引ける腰を逃がさないというように、足

の間に彼の足がぐいっと入り裾が乱れて

いく。
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