恋は盲目〜好きって言ってよ

拓海サイド


彼女からの電話がなかなか来ないまま日

が経つにつれ不安になる。


あの時、無理にでも約束を取り付けるべ

きだったのではと何度も後悔した。


ビールを片手に携帯の画面を睨む。


俺を忘れてしまったのか⁈


他の男と行くのではないか⁈


どんどん、悪い方向へ考えが傾く。


煙草を口にくわえ、火をつけようとライ

ターを持つ…そこへ電話が鳴った。


トルル……

光る画面、待ちに待った奈々の名前。


ライターを放り投げて携帯のボタンを押

して…嬉々する気持ちを落ち着かせ電話

にでる。


電話の向こうから…緊張が伝わってくる



断るなんて許さない。


「一緒に花火大会見に行ってくれるんだ

よね」


断れないように誘導する。


ここまで来るのに時間をかけ過ぎた。


もうこれ以上はもう待てない…必ず彼女

を手に入れる。


彼女の声を聞きたくて毎日、同じ時刻に

電話をかけた。

毎日が楽しくて電話を切る瞬間がもどか

しく思う。


認めてしまえば簡単だ。


俺に夢中にさせるつもりがいつの間にか

俺の方が彼女に夢中になってるなんて…


******************


花火大会前日の夜


飲み会だといい誘ってくる飯島…


断るがしつこく聞いてくる。


話を適当に切り上げ会社を出て彼女の部

屋の前


深呼吸をして呼び鈴を鳴らす。


玄関ドアが開き浴衣姿の彼女が出てきた

。前にも見た浴衣姿だがまだ明るい空の

下では眩しすぎる。


誰にも見せたくない。


このままここに閉じ込めてしまいたい。


そんな事を思っているなんて彼女は思わ

ないのだろう。


「それって、自分で着たの⁈」


つい、脱がす事を考えてしまう。


彼女は、俺が頭の中で浴衣を脱がしてい

るとも知らずに微笑んでいる。


道中、何を話していたのか思い出せない

ほど、繋いだ手に舞い上がっている。



会場に着くなり聞き覚えのある声で呼ば

れる。


飯島だ…


チッ、ちゃんと話を聞いておけばよかっ

た。


まさか、こんな場所で会うだなんて誰が

思うだろう。


綺麗な花火を見に来たと言う飯島…何か

含む言い方が気に入らないが、捕まって

しまったから仕方ない。


適当なところで退散しよう。


先を歩く飯島と奈々が右足を少し引きず

り歩いている。


足を痛めたのだろうか⁈


歩かせるのも可哀想で、近くのガードレ

ールに寄りかかるようにと促す。


頃合いを見て抜け出そうと模索している

と薄暗がりの中、花火が次々と打ち上が

っていく。
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