恋は盲目〜好きって言ってよ

歓声が上がり、大輪の花火が空を明るく

照らす。


一瞬の明かりの向こうで飯島とにこやか

に談笑する彼女が見えた。


俺以外の男の前でそんな顔をしないでほ

しい。


ふと、横を見るとこの間の合コンの時の

女…早希…⁈という女が奈々と飯島を見

ている。


この女…飯島を狙っているのか⁈


あいつはモテる。


女には誰でも優しく接するから勘違いす

る女が絶たない。


罪な男だ。


奈々も勘違いしてあいつを好きになる前

に俺は横の女を連れて彼女の元へ急ぎ戻

り飯島を追いやった。


花火が終盤にかかる頃、彼女の足を気遣

い人混みを避けそうそうに退散する。


痛めた足に俺が気づかないと思っていた

のか…不思議そうに首を傾げる彼女。


俺の言葉一つに頬を染め微笑む笑顔。


もう、冷静ではいられなかった。


「今日は、ずっと一緒にいたい…」


青臭いガキのように気の利いた言葉一つ

言えずに、回りをかえりみず彼女の唇に

夢中になった。


こんなはずではなかった。


ゆっくりと時間をかけて落として行く計

画だったのに俺自身が落ちていく。


余裕なんて微塵もない。


意地悪しないでと涙目で訴える彼女。


俺が意地悪なのか⁈


俺がこんなに思っているのに、つれない

彼女。


無自覚なのか⁈

俺を誘惑する彼女

俺を翻弄する彼女

本心を見せない彼女

意地悪なのは、お前だ…奈々。


なんのことかわからないと言う表情。


俺にはお前だけなのに、なぜ…わからな

い。


ふつふつと感じる怒りと焦り…

俺しか考えられなければいい。

思いを彼女の身体にぶつける。


拓海って呼べよ…なぜ好きだと言わない


俺だけが、好きなのか⁈

まぁ、いい。

時間はある。


気を失った彼女を抱き上げてベッドの上

へ寝かせる。


ムッとする部屋。


暑さでのぼせそうだ…こんな気温の中、

夢中になったのは初めてだ。


エアコンをつけて冷たい水を飲み、彼女

の口元へ…意識のないままゴクン、ゴク

ンと勢いよく飲みこむ。


最後の終盤まであと一押しだ…


今日は、逃がさない。


彼女を腕に抱き目覚めるのを待とう。


身体をねじり、すり寄ってくる彼女

かわいい寝息

ぷるっとして開く唇


愛しい彼女が腕の中でつぶやく。


「たくみ…さん」


思わず、ゆるむ頬に笑みがこぼれる。


こんな顔は彼女に見せれない。


気が緩んで眠気がやってきた…


目が閉じていく中、唇に指の感触がして

彼女が動く気配。


最後の力で目を見開き見つめ合う。


「奈々、……逃げるなよ」


そうつぶやくと深い眠りに落ちていた。
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