恋は盲目〜好きって言ってよ
彼は、入らないのという目で入り口へ目
を動かすが、なかなか一歩が踏み出せな
い。
(どうしよう⁇」
しびれを切らした彼は部屋の中へと入っ
て行く…
戻ってきた彼の手にバスタオルが…
「ほら、これで体拭いて…中に着替えを
出しておいたから着替えて来たら」
私を部屋に押し込み彼は扉の外へ
「心配なら鍵を閉めるといいよ。外で待
ってるから終わったら声かけて…」
「…ありがとう…」
彼の優しさが嬉しくて意地を張るのをや
めた。
ダイニングテーブルの上に置いてあるT
シャツとスゥエットズボンに着替えてあ
たりを見回すと黒と白で統一されたシン
プルな部屋だった。
彼の雰囲気にぴったり…
玄関の扉を開けると外を眺めてる彼は、
目を細めタバコを吸っている…男らしい
その横顔に魅入られる。
「雨が止んできたみたいだよ」
背を向けたままつぶやく彼。
「そう…みたいですね。…着替えありが
とうございます……洗って返しましね」
「いらないから捨てて……」
彼の言葉に胸の奥がズキンと傷つく私が
いた。
なぜ、私は傷ついているの?
背を向けたままの彼に戸惑い、言葉が途
切れ途切れで次の言葉がなかなかでで来
ない。
関わりたくないと思っていた男に何を期
待していたのだろう⁇
「いらないから捨ててくれていいよ…そ
れより、もう、帰ったら」
彼の言葉に、肩の力が落ちていた。
ただ、少し優しくされただけ…そして、
突き放されただけ…
なのに冷たく言われ、泣きそうになるな
んて……なぜ、こんなに悲しいの。
服を捨てても構わないと言う事は、こう
して会う理由がないから⁇
少しは好意を持ってくれていると勝手に
勘違いしてしまった自分が恥ずかしい。
そうよね……
彼ほどの素敵な男ならお似合いの彼女が
いるのだろう。
だから、私が勘違いしないようにと急に
冷たくなったのだ。
背を向けた彼の背中がもう、帰ってくれ
言ってるみたいで涙がじわっと溢れてく
る。
「…そうね。もう帰るわ……お邪魔しま
した」
彼に背を向け唇を噛み締めてエレベータ
ーへ歩く。
なかなか来てくれないエレベーターに八
つ当たりして何度もボタンを押す。