姫 ~なくてはならないもの~
「可愛い、もう相変わらずめっちゃ可愛い!!ふっはーしかも良い匂い!!」
そこでようやく身体が重くなった原因が多分分かった。
ううん、多分なんかじゃない。絶対そうだ。
私に抱きついて首元に顔を埋める人。桐生一輝。
「ちょっと!離れて下さい!!」
どんっと突き飛ばす。
さっきも思ったけどこれはもう大野新をこえるちゃらさだな。
なんて思ったとき、隣から低い声が聞こえた。
「こいつが姫っつーからどういうことかと思ったら。
お前のこと心底見損なったよ……」
私をすっと睨みつけた、大野新はその視線をなっちゃんにずらす。
室内の空気がぐっと重くなった。
早く言って、帰ろう。
「あっ……あのっ…………わた、私っ……」
言え、ちゃんと言え。
「私、姫なんかなれませんから……」