姫 ~なくてはならないもの~
ー生徒会室。
さつきが出て行ったあとの生徒会室では誰も喋らない静かな空気が漂っていた。
それを最初に破ったのは、一輝だった。
「まさかここまで似てるとは、反則じゃない?」
「なっちゃんって呼んでるの聞いたときはさすがの俺も吃驚したわ」
「……セナ、一人称」
「生徒会でいるときくらい、いいだろ?」
セナは口角を上げ、棗を見た。
棗は特に表情を変えず、コーヒーを口に含む。
「正直なところ棗ってさ、どっちが先なの?」
そっくりすぎる2人のお姫様。
棗はハルトの質問にクッと喉を鳴らして笑ったあと、
「………さあ?」
掴めない、掴もうとさせない、その姿。
この部屋にいる誰もが、思い浮かべる2人の少女。
これからどうなるかなんて、誰も考えつかないだろう―――――――――――――………。