姫 ~なくてはならないもの~





   ・






 昼休みになった。




 いつもみたいにユイとお弁当を食べる私。












「宝生さん、いるー??」

「はぁーい?」












 クラスの子に呼ばれて身体をまわし返事をする。











「廊下でね、女の先輩が呼んでるよ」

「あ、うん。ありがとう」









 そう伝えるとクラスの子は他の子と廊下に出て行った。



 女の先輩か、良いことじゃない気がする。行きたくないな……。



 でも、引き受けた以上行かないと。





 そう思い立ち上がろうとしたとき。










「さつき、行くの?」

「え?あ、うん」










 そう言うとユイは顔をしかめた。











「私、知ってるよ。さつきの下駄箱に入れられてること。
 さつきが相談してくれるの待ってたんだよ。
 もうこれ以上さつきが傷ついてるとこ、見たくないよ」











 ユイはぽたぽたと涙を流した。



 そっか、ばれてたんだ。ユイに。


 ありがとう、ユイ。


 でも、ここで逃げても何も変わらない。



 だから、









「大丈夫だよ、私は。ちょっと行ってくるだけだからね」












 それだけ伝えると廊下に向かった。





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