姫 ~なくてはならないもの~
「さっさとやめろよ。やめたら殴らないからさ」
「そうそ、うちらだって殴りたいわけじゃないんだし」
胸元をつかまれていた手が離される。
その代わりに逃げられないように段々と近づいてこられて。
後ろに下がるんだけどもうこれ以上は校舎があってさがれなくて。
どんっと私の顔の横に、手をつかれる。
いわゆる、壁ドンってやつ。
ぜっ、ぜ……全然ときめかないよ!
「本当にやめる気ないです、何を言われても、辞めないです」
「ねーなんかもう私腹立ってきた」
「殴らない?」
「いーね、それ」
「殴ってもやめないって言ってたけど痛い目みたらわかるでしょ」
そう言った一人が右手を大きく振り被る。