姫 ~なくてはならないもの~
焦る私は、先輩たちにみつかった。
でも先輩は一輝さんの姿を見ると、顔を真っ赤にして動きを止めた。
「あんまり姫のこといじめないでくれるかな?」
「はぁい」
語尾に✩がつきそうなちゃらい喋り方。
先輩方はもうメロメロの様子。
「次やったら、退学じゃすまねえからな」
一輝さんが先輩たちの耳元で何かをつぶやくと、先輩たちの顔色が一気に変わった。
ついてこなくなった先輩たちを放置し、今度は手をつないだ私たちは歩き出す。
「あの、助けてくれてありがとうございます」
一輝さんの方を見るけれど、手をつないでいない方の手でスマホをいじり真剣な顔をしている。
どうしたんだろう。
考えてみれば1週間近く生徒会室には行っていない。
生徒会でなにかあったのかな……。
「あ、棗?発見した。うん、やっぱりそうだった。
わかった、じゃ生徒会室で」
スマホをポケットにしまった一輝さんは私の方を見て
「てことだから生徒会室、行くよ?」
と、またいつもとチャラそうに言う。
そのとき、キーンコーンカーンコーンというチャイムの音が聞こえた。
5時限目、遅刻ですか……。