姫 ~なくてはならないもの~
「おいチビ、知ってんだぞ」
声を荒げる大野新。
知ってるって、何を………?
思い浮かぶのは下駄箱に入れられているあの手紙。
「じゃあ質問を変えようか。最近、姫になったことに対して何か言われたことない?」
「別にっ……」
「本当に?」
じっと相沢さんに見つめられて、思った。
この人、知ってる。知ってて聞いてるんだ。って。
「手紙がっ……」
「手紙?」
「下駄箱に入ってた。いつからか覚えてないし、入ってない日とかもあった。
多い日は何度かに分けられて何通も。でも、別にそんなの……」
気にしてないから。そう続くはずだったんだ。なのに。
隣にいる彼が、急に立ち上がって私に向かって深々と頭を下げた。
「悪い。お前に迷惑かけるつもりはなかったんだ……」
棗が頭を下げたのに続いて、他の役員たちも頭を下げる。
みんなは悪くないのに。私が姫として認められないのが悪いのに。
「き、気にしないでっ……」