姫 ~なくてはならないもの~





 そんな大野新の姿を見た相沢さんは軽く笑って






「新が言った通りだよ。俺らは椛のような卑怯な手は使わない」








 すっと目を細める相沢さんから意思の強さが伝わってくる。








「椛がいつさつきちゃんを襲ってくるかわからない。
 だから、送迎されて守られて欲しいんだ」









 今度は座ったまま頭を下げる相沢さん。








「あ、の、私、自分の身くらい自分で守れます」







 嫌なくらい身体に染み付いた護身術。


 殴られそうになったら反射的に多分避けてしまう。




 ……学校にいるときくらい、こんなこと、思い出したくないのに。



 ぎゅっと強く手を握る。つめがささって手は赤く染まった。









「大人しくお前は守られろよ」







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