姫 ~なくてはならないもの~





「宝生さつき、あがって来い」












 なっちゃんのその声で、女子たちが一層騒ぐ。



 「宝生って誰よー!」とか、「私姫になるためにここ受けたのに……」とか。




 宝生さんも大変だなー、こんな中行かないといけないなんてさ。




 私はもう寝ます。おやすみなさい……。










「さつき!ちょっとさつき!!」










 隣からそんな声が聞こえた。


 もう、ユイ。そんなに騒がないでよ。寝れないじゃない……。












「な~に~?もー煩いなあ」
「宝生さつき!!あんたでしょ??」
「そんな馬鹿なあ~。宝生さつきでしょ~?だって私の名前は宝生……さつ……き………?!」






 そ……そんな!!ばなな!!

 じゃなかった。



 そんな…………馬鹿な!!







「宝生さつき、早く来い」







 壇上から私を見つけたなっちゃんが、低い声でそう言う。







「はっ……ははははっはい!!」







< 9 / 63 >

この作品をシェア

pagetop