姫 ~なくてはならないもの~
「宝生さつき、あがって来い」
なっちゃんのその声で、女子たちが一層騒ぐ。
「宝生って誰よー!」とか、「私姫になるためにここ受けたのに……」とか。
宝生さんも大変だなー、こんな中行かないといけないなんてさ。
私はもう寝ます。おやすみなさい……。
「さつき!ちょっとさつき!!」
隣からそんな声が聞こえた。
もう、ユイ。そんなに騒がないでよ。寝れないじゃない……。
「な~に~?もー煩いなあ」
「宝生さつき!!あんたでしょ??」
「そんな馬鹿なあ~。宝生さつきでしょ~?だって私の名前は宝生……さつ……き………?!」
そ……そんな!!ばなな!!
じゃなかった。
そんな…………馬鹿な!!
「宝生さつき、早く来い」
壇上から私を見つけたなっちゃんが、低い声でそう言う。
「はっ……ははははっはい!!」