ねこにごはん【完】
今日は美化委員の仕事は無いけれど、天気も良いしせっかくだからあの庭でお昼を食べようということになり、私は菊地原くんと共に廊下を歩いた。

こうして菊地原くんの隣を歩けるなんて夢のようだ。
なんだか飼い猫と散歩をしている気分になる。
そのふわふわな髪の隙間から覗く首に、鈴とがついた赤い首輪をはめられたらなぁ、と危ない妄想をしているうちに庭に到着。

周囲には仲良くお弁当をつまんでいるカップルや、楽しそうにお喋りしている女子達が多い中、運良く空いていたベンチに駆けていく菊地原くん。
腰を下ろした彼の隣に私も座る。


「はいどうぞ」


私は二つ持ってきたうち、前までお兄ちゃんが使っていたシンプルな黒のお弁当箱を膝の上で開けて見せた。
そしたら菊地原くんはまた感嘆の声を上げて、キラキラと目を輝かせたものだから、その愛くるしさに胸がきゅんとしてしまう。

とりあえず私が初心者ということもあり、栄養がありなおかつ難易度の高くないメジャーな品目を集めてみたが、果たして彼の口に合うかどうか。
そんな不安を抱きつつも菊地原くんにお弁当を手渡してから、自分の赤いお弁当箱の蓋を開けた。
少し焦げちゃってるウインナーを見つけて、今度からはうまくやらないとなぁと反省する。
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