ねこにごはん【完】
……食べさせてくれ、ってこと?

奥から覗く八重歯に興奮しそうになりながらも、私は菊地原くんの手にあるお弁当箱から箸で摘まんだ玉子焼きを彼の口に運んであげた。
仮にも思春期真っ只中の年齢だし人によっては間接キスとか騒ぐだろうけど、菊地原くんは私同様こういうの気にしないタイプなんだろうか。
スキンシップ激しそうだから凄い納得かも。


「おいしー」
「ほんと?」
「うん!もっと食べたいなぁ」
「はいはい。言われなくてもちゃんとあげるから、そんなにがっつかないの」


こちらに身を乗り出してくる菊地原くんが餌をねだる猫みたいで、私は母性本能を掻き立てられつつも手を動かす。
結局そのままの流れで、菊地原くんのお弁当は全て私が食べさせてあげる形となった。
ついでにあまりのトキメキに胸が苦しくなった私の分も、彼の胃袋に収めてもらった。

めちゃくちゃ可愛い。この一言に尽きる。

もうこれからはわざと箸を一膳しか用意しないで、毎度こうして食べさせてあげたいくらいだ。

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