ねこにごはん【完】



あの日から私と菊地原くんは美化委員の当番の有無を問わず、庭のベンチで一緒にお昼ご飯を食べることが日課となっていた。
先に午前の授業が終わった方がどちらかの教室に迎えに行き、並んで歩いてあの庭に向かう。

また、天気が悪い日は一階のホールに行って、真心込めたお手製の弁当を彼に差し出すことも。
毎朝早起きしては、積極的に色々なおかず作りに挑戦してみた。
お陰さまで私の調理スキルも向上し、それに伴いレパートリーも増えていった。

ある時はピーマンの肉詰めの肉だけしか食べなかった菊地原くんに嫌いな食べ物を克服してもらうため、細かく刻んだピーマンを他の野菜と一緒に、なるだけ苦味が出ないよう工夫して味付けしてみたり。
ある時はサツマイモチップスやゴマプリンといった、健康的な食材を使用したデザートを作ってみたり。
ある時はサッカーボールに見えるよう海苔を貼ったおにぎりや、ケチャップで猫の絵を描いたオムライスで遊び心を演出してみたり(家で描いてきたせいで、お昼には原形をとどめていなかったのは悲しかったけど)。

またある時は、つい出来心でにぼしをそのままご飯の上に乗っけていっては、それを「猫になった気分だぁ」と笑いながら食べる菊地原くんを眺めて、うちの猫みたいだなぁとニヤニヤしてみたり。
ついでにこれも出来心で、最早手作りではない市販のたい焼きを与えて、お魚くわえた野良猫みたい、と和んでみたり。
流石にマタタビは自粛したけどね。

そうして菊地原くんとお昼を共にするようになってから、早くも一ヶ月が経とうとしていた。
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