ねこにごはん【完】



品揃え豊富な店内は比較的若い客層で賑わっていた。
テスト前ということもありうちの学校の制服を来た人を見掛けることはなかったから、私は猫グッズを求めて忙しなく視線を動かす。
そこで目にとまったのがパーティ用のコスプレコーナーにあった猫耳カチューシャである。
カチューシャを手にとった私は瞬時にこれをつけた菊地原くんを想像して、床をのた打ち回りたい衝動に駆られた。


「これ奈良似合うだろうなぁ」


隣にいる菊地原くんはハゲカツラを見ながらそんなことを言っていたけど、だったらこの猫耳は彼のために作られたものだと思う。

とうとう抑えきれなくなった私は、他の面白そうな商品を物色している菊地原くんに背後から近付き、その頭にそっとカチューシャをつけてみた。
こちらを振り返って特に驚いた素振りも見せず、寧ろ頭の上にハテナマークを浮かべて状況を把握できていないらしい菊地原くんが、鼻血を誘うほど可愛くて私は声を上げてしまいそうになる。

なにこの子、お持ち帰りしたいんですけど!
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