ねこにごはん【完】
「わあ、可愛い……」


思わず声に出してしまうほどである。
へぇー、白猫と黒猫の二種類あるんだ。いいなぁ、欲しいなぁ。
自分好みドストライクの商品を前に生唾を飲み込む。

しかし私にはこれをレジに持って行くのを躊躇う理由があった。
断じてお小遣いが足りないわけではない。
単に自分のキャラじゃない気がするという不安のせいだ。
背も菊地原くんより少し低いくらいで女子の中では明らかに高い方である私は、バレー部内でも後輩からカッコイイと慕われて勝手にボーイッシュなイメージを持たれているし、クラスメイトからは落ち着いていてしっかり者だなんて印象を抱かれている。
ほんとは全然そんなことないのに。

ゆえに柄にもなく目立った可愛い私物をあまり持てない。
猫のワンポイントがついた靴下を使用するのが精一杯な現状だ。
部屋にはぬいぐるみをはじめとした猫グッズが山のようにあるけど、学校での私はあくまでそういうのは興味が無いように振舞っている。
今使ってるお弁当箱なんてめちゃくちゃシンプルなデザインのものだし、こんな可愛い猫のお弁当箱使ったら、絶対周りから突っ込みもらうだろうな。

思い返せば菊地原くんと絡み始めた時も周囲からは相当驚かれたっけ。
やっぱり可愛い物好きだなんて私のキャラに相応しくないのかな。
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