ねこにごはん【完】
私が菊地原くんと一緒に過ごしていることに関しての本音は「猫みたいに可愛いから」だけど、みんなには「不健康な食生活を徹底してあげたい」なんていかにも真面目な理由で通している。
ただ、私はどうも菊地原くんといると素に戻ってしまう傾向があるため、ご飯をあーんとか膝枕とかの現場を目撃した人達の中で、私のイメージが少しずつ砕けてきているという噂は聞いたけど。

それでもやっぱりこれを買う勇気がない。
男子から「お前には似合わない」とかからかわれるのがオチだろう。
気にしすぎかもしれないけど、気にしてしまう、お年頃の女子とはそういうものなのだ。

その場に立ち止まったままの私を不思議に思った菊地原くんから声がかかる。


「欲しいのぉ?」
「あー、いや、ちょっと可愛いなって思って見てただけだから」
「ふぅん」


軽く流してくれた菊地原くんには感謝だ。

よく考えたらお弁当箱なら今使ってるので間に合っている。
まして使用機会に恵まれないような物を部屋に飾っておくだなんてのは余計な出費になりかねない。よし、今回は諦めよう。

そう言い聞かせた私は、後ろ髪を引かれる思いをしながらも菊地原くんと店を出た。
せっかく菊地原くんと学校の外で過ごせたのに、良くないこと考えちゃったせいで気分が落ち込んじゃったな。

あーあ、家に帰ったら勉強しなきゃ。
しっかりと瞼に焼き付けた菊地原くんの猫耳姿を燃料にすれば頑張れるもんね。
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