白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
「歩ける?」
正門を出る前に、不便に歩くあたしを見て柊が眉を寄せる。
「歩けるよ。カバンも貸して、自分で持てるから」
あたしのスクールバックを持ってきてくれてからずっと自分の肩に提げている柊に言うと、柊は体を捻らせてあたしからカバンを遠ざけた。
「いいよ。カバンくらい俺が持つし。雪羽は歩くことだけに集中して」
そう言って、口角を上げる。
「ありがと」
なんだか、照れ臭かった。
久しぶりにふたりっきりで帰る家路。
あたしは短くお礼を言って、柊の隣をゆっくり歩いた。
柊も、何も言わずにあたしに歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれる。
「ねぇ」
あたしは、隣の柊を見上げて聞こうとした。
付き合って、初めて帰った日を覚えているかって。
「なに?」
柊が、あたしを見下ろす。
薄暗くなっていく中、ぼんやりと見える柊の顔。
「ううん。何でもない」