白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


足のケガのせいであまり練習に参加できなかったけど、やれるだけのことはやろう。


1位なのに、あたしで抜かされるわけにはいかない。


「ユキ~!! はいっ!!」


あたしの名前を呼びながら全力で走って来た女子に手を上げて答え、右手を後ろに伸ばした。


バトンをしっかり受け取り、強く握って走る。


あたしも、さっきの柊のように風になるんだ。


風になって、一気に駆け抜けて見せる。


前から受ける風に前髪が上がる。


応援団の力強い応援の声と、ハイテンポの音楽があたしの気分を上げてくれる。


今どのくらいの差が付いているのか、後ろを振り返って確認したいけど、運動音痴のあたしにはそんな余裕はない。


追い抜かされるんじゃないかって不安だけど、今は、やれるだけ全力で走るしかな……。


ズキンッ……!!


「……ッ!!」


突然、右足首に電気が走ったような痛みを感じ、一瞬ガクンと体が傾いた。


右足が地面に付く度に激痛が走る。


しまった……。

あと少しなのに……。


あまりの痛さに走るスピードが落ちてくる。


だけど、今までみんなが1位をキープしてきたんだ。


あたしで順位を落とすわけにはいかない。




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