白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
演劇部の部室は少し狭い。
中央に長机がひとつ置いてあり、両はしにロッカーがあるのでそれだけで部屋がいっぱいだ。
それなのに、たくさんの種類の衣装やダンボールが積み重ねられているので、体を横にして歩かないと人が通れないくらいの狭さ。
こんな狭い部屋で柊とふたりっきりだと思ったら、緊張してよく衣装を確認出来ないかもしれない。
ごめんなさい、先生……。
一歩、部室の中に足を進めると、少し埃っぽい匂いがした。
ダンボールの匂い、古い衣装の匂い、絨毯の毛の匂い。
嫌な匂いではなかったけれど、なんだか不思議な気持ちになる。
部屋は窓が締め切られているので、とにかく暑かった。
まだ何もしていないのに、肌がベタつく。
「どれだ?」
柊が、床に積み重ねられているダンボールをひとつひとつ開けて確認している。
あたしは緊張で震える鼓動を隠そうと、とにかくラックに下がっている衣装を見ていった。
「先生は王子と姫の衣装が入ってる箱だって言ってたよな?」
柊に言われて、ヒヤリとする。