白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


柊はため息とともに、右腕につけている腕時計を確認した。


それを見て、ジワリと涙が浮かんで来る。


『……時間か』


まだまだ寒さの残るキンと冷えた空気中に、柊のかすれた声が転がった。


彼の白い吐息に乗って、言葉が寒空に上っていく。


あたしはどうすることも出来ない寂しさに、唇をグッと噛み締めた。


本当に行っちゃうの?


これでお別れなの?


眉間がけいれんして、ひと粒、ふた粒と、次々に頬に涙が伝っていく。


『……行かないで』


あたしの口から出た声はとても頼りなかった。


『柊……お願い……行かないでよ』


細かく瞬きをして、溢れる涙を外に外に出そうとする。


涙でかすむ柊は、眉を寄せてとても苦しそうな表情だ。


『……ごめん。雪羽……』


『…………』


『俺だって、行きたくないよ……』


柊の瞳にも徐々に涙が溜まっていった。


どんどん赤くなっていく彼の目。


柊の両親の転勤が決まって、彼が遠くに引っ越してしまうって覚悟は出来ていたはずなのに……。


今日は笑顔で送り出そうって。



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