白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
『雪羽、聞いて』
『嫌だ!! 聞きたくない!!』
あたしは大声を上げて、耳を塞いだ。
すると柊は、抱えていた大きなボストンバックを雪の残るアスファルトの上に下ろして、耳をふさぐあたしの両手をそっと包み込んだ。
そして、ゆっくりあたしの手を下ろす。
『雪羽。俺、もう行かないと。バスが来る』
少し遠くに目をやると、こちらに向かって走ってくるバスが小さく見えた。
もう、あと数分しか残っていない。
柊が、あたしの手をギュッと握る。
あたしは泣いて乱れた呼吸を整え、柊を見上げる。
『俺ら、離れ離れになるけど、これで別れるわけじゃないだろ?』
『…………』
『簡単に会いに来れないけど、それでも俺はずっと雪羽を想い続けるから』
『……本当に?』
また涙が溢れる。
『本当に、あたし達別れない?』
『うん。別れないよ』
『絶対?』
『うん。絶対』
柊は優しく言って、静かに口角を引いた。