白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
バスの音が近づいてきて、柊と一緒にバスの方を見る。
行っちゃう……。
柊が、あたしから手を離した。
そして、アスファルトに下ろしたボストンバックを肩にかける。
『じゃあ……また』
そう言う彼の眉間が、また細かく震えだした。
あたしにもう涙を見られないようにサッと俯いたあと、素早くあたしのおでこにキスしてくる。
そして、走ってバス停まで向かった。
あたしは桜の木の下に立ちすくんだまま。
柊の走っていく背中を見て、流れ落ちる涙を飲み込んだ。
鼻の奥がツンと痛くなる。
バスと柊はほぼ同じタイミングでバス停に到着した。
相変わらずバスには人が乗っていない。
バス停にバスが止まり、ビーっという鈍い音とのあとに、後方の扉が開く。
柊はステップに足をかけ、一瞬動きを止めた。
そして、少し離れているあたしを振り返った。
『雪羽!! 必ず連絡するから!!』
大声で言い、素早くバスに乗り込んだ。
すぐに扉は閉まり、柊は一番後ろの座席に腰掛ける。
そして、後ろの大きな窓からあたしを見ていた。
あたしは桜の木の下から走り出し、出発したバスを追いかけた。