白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
その日日直だったあたしは、放課後ひとり残って日誌を書き、職員室まで持っていった。
廊下に出ると、底冷えする寒さ。
背中を丸めて小走りで職員室に向かう。
職員室は暖房が効いているから、早く行って少し温まってから帰ろう。
「失礼しま……」
ブルっと体を震わせながら職員室のドアを開けると、中に柊の姿を見つけて、ドアを開ける手を途中で止めた。
何故か、中に入ることが出来ない。
あたしは少しドアを開けたまま、体をドアの陰に隠す。
柊と先生の会話を聞き取ろうと、耳を少し開けたドアの向こうに集中させた。
「もう準備は進んでいるのか?」
「はい。もう殆ど済んでます」
……準備?
何の話し?
「そっか……。親御さんが転勤多いと、おまえも何かと大変だよな」
「もう慣れましたよ。小さい時からですから。お陰で親友と呼べる友達はいません」
柊が冗談交じりに言うと、先生は椅子の背もたれに体重を預けハハハと笑った。