白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


「俺なら、篠原にあんな顔をさせないのにって、悔しくて悔しくて……」


「…………」


クっと、涙をこらえる、ハルの声……。


「おい!! 黙ってないで何とか言えよ!!」


「…………」


「喧嘩売ってんのかよ!! なんで何にも答えねぇんだよ!! 本気で殴るぞ!!」


「殴れよ」


「……は?」


「殴りたいんだろ? 殴れよ。それでおまえの気が済むんだろ? 俺はおまえに何を言われようと、気持ちは変わんねぇよ。ほら、早く殴れ……」


バキッ……ッ!!


痛々しい音のあとに、ガタガタと崩れ落ちるような音が聞こえ、あたしはサッと壁から出た。


怒りで、激しく肩で息をしているハル。


その前には、顔を歪めて口元を押さえ、コンクリートの上に倒れる柊の姿があった。


ふたりは突然のあたしの登場に、とても驚いている様子だった。


「篠原……」


ハルの目が丸くなる。




< 255 / 297 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop