白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
翌日。
ジッと家にいることができなくて、桜の木の下に向かった。
雪の残る、桜の木。
もう3月後半だったいうのに、まだまだ雪は残っている。
桜の木の下には、泥が混じって薄い茶色になった雪が少しだけ溶けていた。
もしかしたら、出発前に柊が思い出のここに来たかなって思ったけど、この雪の状態じゃ、足跡を確認することができない。
まぁ、雪に足跡が残っていたとしても、それが柊のものかなんて、わからないのだけど……。
ゆっくり、白く化粧をした桜の木を見上げる。
吐く息の白さと、桜の木の白さが重なる。
風が吹いても、雪の重みのせいで枝は揺れない。
葉も少ないので、カサカサとも鳴かない。
冬独特の、静けさだ。
柊……。
今頃、もう駅かな。
電車に乗って、空港まで行くんだよね?
あの頃と同じように、ここから、バスに乗って……。
「……あ」
あたしが桜の木の下からバス停を振り返ると、そこには厚着をしたハルが立っていた。
少し、あたしを睨むようにして。
あたしはハルを見つけ、挙動不審に顔を伏せる。