白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
『あ、あの……篠原さん。突然、ごめん』
古賀くんは、肩から斜めにかけた学校指定のカバンを小さくジャンプして肩にかけ直し、ポリポリとこめかみをかいた。
あたしも、肩に斜めに下げるカバンの持ち手をギュッと握る。
雪はもうやんでいるけど、風が吹けば桜の木から溶けた雪の水滴がポタポタ落ちてきた。
古賀くんの前髪にも水滴が落ちて、彼は子犬のように顔を振った。
『あの……えーと……』
さっきからずっと躊躇いながら話す古賀くんを見て、あたしは緊張でどうにかなってしまいそうだった。
このシチュエーション。
古賀くんとは話したこともないけど、少し期待してしまう。
『篠原さん、その、好きな人とかいるの?』
ドックン。
カバンの持ち手を握る手に力が入った。
あたしは、小さく首を横に振る。
すると、さっきまで少し強張っていた古賀くんの表情が、パァっと明るくなったんだ。