白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
柊はあたしから手を離し、桜の木の下まで行って、木の幹に手をそっと当てていた。
「こうやってこの幹に触れると、なんか雪羽と繋がってるような気がしてさ」
「……え?」
「だって雪羽、俺が引っ越した後も、ずっとあの桜の木の下にいただろ?」
「どうして知ってるの?」
あたしが目を丸くすると、柊は肩をすくめた。
「だからさっきも言っただろ? 繋がってるような気がするって」
そう言ってニッコリ笑う。
「俺、毎日、ここに来て気に触れてたんだ。こうやって幹に触れて目を閉じると、別なところで桜の木の下にいる雪羽の映像が頭に浮かぶんだよ」
柊は目を閉じて、いつもやっているであろうことを、あたしの目の前でしてくれた。
「会話はできないけど、ここに来て木に触れたら、雪羽とひとつになれた気がしてさ」
目を開けた柊が、あたしを見てまた微笑む。
あたしも微笑み返した。
ここの桜の木にも雪が積もっていて、太陽の日差しにキラキラと輝いている。
「雪羽、こっち来て」
柊が、桜の木の下で手招きをした。