白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


あたしは広角を引いて、柊の横に行く。


柊はあたしと向き合うと、おもむろにズボンのポケットをまさぐり始めた。


すぐにポケットから出てきたのは、小さなシルバーの箱。


あたしは驚いて、息を飲んで目を丸くする。


柊は開けてみろというように、顎で箱を指す。


小さなリボンを開ける手が震えた。


この中身が何なのか、わかるから。


小さな箱を落としてしまわないように、慎重に開ける。


中から出てきたのは……。


シルバーのシンプルな指輪。


「これ……」


「俺、今まで雪羽に何もしてやれなかったから」


「…………」


「ほら、覚えてるか? 夏祭りの時、俺がおもちゃの指輪を取ってやっただろ?」


忘れるわけがない。


パープルの可愛い指輪だ。


「いつか、絶対に本物を雪羽にプレゼントしたくてさ」


「……柊」


「まぁ、それもまだまだ安物だけど、あのおもちゃよりはいいかと思って」


柊が、後頭部をかきながら照れている。


「指輪を渡す場所も、ここがいいなって、ずっと計画立てててさ」




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